サーガはやりょでバレンタイン→ホワイトデー小ネタ&SSS

↑バレンタインチョコをくれるリョウ君

↓ホワイトデーのお返しSSS(真~アークまで・脳みそ甘め)

あまいもの

すとん、と切り落とした四角い欠片を計量用皿の上に乗せる。
表示されたグラム数に、どうやら感は鈍っていないようだと、男は目を細めた。

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甘ったるいものは、食べることは出来てもどうも好きにはなれない。
しかし、今宵限り、話は別だ。
型抜きの表面部分に少し気泡が入った、いかにも手作り慣れしていないホワイトチョコは、変わらずの甘さなのに全く喉に焼けることなく食道を通った。
「うまいじゃないか」
「そりゃあ、基本的なとこはミチルさんたちがやってくれたんだから当たり前だろ…俺ぁ味選んで型に流しただけだぜ」
「こっちのは、ミルクか」
昨日バレンタインに、食堂で社員たちに振る舞われたチョコーー数に限りがあるため早い者勝ちだが、ゲッターチームには別にコッソリと取り置きがあったーーの色を思いだし、隼人は透明パッケージの中に入ったもう一つの、四角のチョコを取り出す。
「ビターは先に冷やしちまってて無かったんだよ…わりいな、二つともあめぇので」
ベッドの上、隼人の左側に腰かける竜馬が、決まり悪そうに呟く。頬が赤い。照れているのか。まぁそれも仕方がないことだ。隼人も、よもや竜馬がこんなものを自分に用意してくれるとは思わなかった。まさか自分達の恋仲に、手作りチョコなどという言葉だけでも甘ったるい物が介入してくるとは。
最近色々なことに興味をもって『自分もやってみたい』盛りの元気に付き合う名目て作ったらしいが、一体どんな顔をして『俺も作る』と言ったのやら。
「こいつも、気泡が多いな」
「慣れてねぇからしょうがないだろ」
かけている部分を指先でなぞりながら呟くと、竜馬が自棄気味に嘆息した。
「いや、お前が作ったんだと解って良い」
「……そーかよ」
惚気にも近い言葉をかけると、今度はふいっと目線を向こうにそらしてしまった。
分かりやすく照れる姿を暫し眺めて、隼人はもう一つも口の中に入れる。
(不思議だ……)
なんの捻りもないミルクチョコの味だ。しかし、甘ければ甘いほど、妙に感情がふわふわと撹拌し、輪郭をなくしてとろけていく。
(これは…)
知らない感情ではない。しかし隼人が普段感じる時、『それ』はもっと、確固とした形を持っていた。
かといってこの感覚に覚えがないわけでも、その正体が全くわからないわけでもない。
「そっちはどうだよ」
「美味い」
「ふーん、…ならまぁ、良かったな」
気恥ずかしさにも慣れてきたのか、色好い反応に元気付けられたのか、竜馬の語尾は笑っていた。だが、顔はそっぽを向いたままだ。何度か隼人が視線をそちらに寄せてもそのままで、そのくせ身体中から隼人の反応を気にしていることが察せられるのがなんだかほほえましかった。
「バレンタインに色々ともらうことは、それなりにあったんだが」
「お、おう…」
飽きるほどに神童扱いされた幼少期から体操の選手をやっていた頃まで、ファンやコーチ、マネージャーからそういうものを貰ったことは何度もあった。
どれも人並みにありがたいと思っていたし、一般的な友好の範疇での贈り物には、きちんと返礼もしていた。しかし、これは、ことのほか。
「嬉しいもんだな。まさか貰えるとは思っていなかった『本命』から貰えるというのは」
本当に予想外の事だった。こういった行事は研究所に来るまで縁がなかった彼が、しかも恋人同士とはいえ同じ男である自分に、偶然が重なって起こった気まぐれだとしても、プレゼントを用意してくれるとは。
「……!」
おあつらえむきにベッドについていた竜馬の右手を、隼人は自分の左手で包む。一瞬びくりとした反応が帰ってきたが、その後はおとなしくなった。
「~~~~」
指と指の間をほぐして自分のそれと絡め、きゅうと握りしめる。竜馬が黙ったままなのを良いことに、隼人はその武骨な手の感触を確かめた。骨ばった、節が太い男らしい指が、あの可愛らしいハートを作ったのかと思うと、感情まで甘味を頬張ったような心地になる。
「っ…隼人……ぁっ」
無言で手のひらを愛でられ続けるのが恥ずかしくて耐えられなくなったのか、竜馬が隼人の様子を伺うように、顔を傾ける。
そして竜馬は気づいた。隼人はずっと、その時を待っていたのだということに。
「!?……んっ…んんっ」
待ち兼ねていた手に頬を取られ、顔を寄せられ唇を重ねられる。
挨拶代わりのふわふわとした口唇重ねもそこそこに、唇をわって入ってきた舌に、ほのかに残るチョコの風味。
口づけの直前、一瞬見た隼人の顔には彼が二人きりの時にだけ見せる類いの、穏やかな笑みが浮かんでいた。
(あ…甘ぇっ……)
幾度か角度を変えて咥内をまさぐられながら、竜馬は困ったように眉根を八の字に寄せる。ほのかに甘さの残ったキスも、背に回った隼人の掌も、ベッドの上の空間も、全て途方にくれるほどに『甘い』としか形容しようがないものだった。
(あっ…やべ、それはっ……汚しちまう……)
ベッドの上に押し倒されそうになり、仕事帰りの作業着姿のままの竜馬は自分を抱く男の胸板を幾度か押して抵抗しようとする。
しかし、どう考えても押し退けられる程度の力のはずなのに、隼人の厚い胸板を衣服越しに感じる度に、竜馬の身体からは不思議と、するすると力が抜けていってしまった。
「ん、んんっ…」
結局、ぽすりとシーツに背中をつく頃には、竜馬の手は隼人のシャツを力なく握りしめているだけになってしまっていた。
「やめ……おれ、風呂入ってねぇっ…」
やっと唇を解放されたと思ったら、そのまま首筋に吸い付かれ、竜馬は慌てて止める。
冬場とはいえ、少し暑くなって作業着の上着を脱ぐほどの肉体労働のあとだ。ただでさえ代謝が良い竜馬は汗ばむ肌に触れられるのを嫌がった。
「ああ、…甘いものの後で、塩気がちょうど良い」
「て、てめぇな!な、何言っ……」
隼人の言葉に、竜馬は余計に体温が上がる。真っ赤に熟れた頬に気をよくし、隼人はそこにも口づけた。
「来月は、何を返せば良い?食いたいものがあるなら言ってみろ」
「えっ……あ、あぁ、ホワイトデーってやつか?…んな、別に良いって、んっ!」
「そうはいかんぞ、リョウ、貰いっぱなしは俺が気に食わん」
特に甘いものが好きというわけではない竜馬が、なにも思い付かずそう返すと、隼人が耳元で追い討ちのように呟いた。
「~~~わ、わかったから耳元でしゃべんじゃねえ!」
そこに直接息を吹き込まれるとぞくりとしてしまう竜馬が、困ったようにわめく。
「とはいってもよう……ううむ……」
暫く、竜馬は思案するために自分の世界にこもる。
甘い空気はたち消えたが、自分のために脳みそを使っている竜馬を眺めながら、隼人は邪魔にならないようにその髪を撫でていた。
「っても、俺もそこまで甘いもん好きでもねぇし」
「ホワイトデーはチョコでなくても、クッキーやケーキでも良いらしいが…焼き菓子の類いならそこまで甘ったるくないかもしれんな。マドレーヌとか、フィナンシェとか…」
「まど…ふぃな…?なんだそれ、想像つかねぇ……」
耳馴染みのない横文字に、竜馬は怪訝そうに眉を寄せる。
「食ってみたいか?」
「…!…おう!」
未知のものへの好奇心に、竜馬はパッと笑顔になる。
「じゃあ決まりだな…いや、まてよ…」
「ん?」
美味い店なら昔もらった記憶のなかにいくつか覚えがある。そう思いがけた隼人だったが、竜馬の笑顔を見ているうちに、外のことを思い付き、閃いたように口角をあげた。

「おめえ、出来ねぇことってあるのかよ」
「まぁ、やろうと思ったからにはそれなりに、形になるようには勤めるからな」
「………」
所員に解放されているキッチンの横、食事用に置かれているテーブルと揃いの椅子に腰掛け、竜馬はなんだかとんでもないことになったと思っていた。
シックな黒のエプロンをした恋人が先程まで焼いていた菓子を前にして、竜馬はその焼き色の、ムラのない綺麗さに少したじろぐ。
(俺、溶かしたもん型に流しただけなんだけど……な、なんか、これ、つくんの難しそうなんだが……)
白いワイシャツの上にエプロンをした隼人の姿は、妙に様になっている。その姿と目の前の菓子を幾度か見返しす竜馬は、本人が思っているよりも緊張しているように見えた。
『せっかくお前がやったこともないのに作ったんだ、俺もそうした方が張り合いがある』
そう言った隼人が小麦粉やら砂糖やらを持ち込み、焼き菓子作りの試作を始めたのが三週間ほど前だった。
所員の目を盗んだため、試作の時間は基本夜間になった。しかし夜勤などでうっかりキッチンに立ち寄った所員など、『あの』神隼人があぁでもないこうでもないといった様子で菓子作りに専念している姿を目撃してしまった者も幾人か居た。彼らは一様に、疲れのあまり幻覚でも見たのかと、狐につままれたような心地になったようだ。勇気を出して直接聞いてきた所員には、隼人はあくまで何事も無いかのように、以前からの趣味で、作っている間は仕事のことを考えすぎずにいられるから良いんだと答えていた。そしてそれは、隼人にとって半分は本当のことだった。
分量の正確な調整が必要だったり、少し判断がずれただけでも思ったように生地が膨らまなかったり、菓子作りの行程には科学実験に近いところがあり、それは隼人の質には案外と相性の良いものだった。
たまに、火炎瓶やらなんやらの危険物を自作していた頃のことを思い出し『一歩間違えると爆発しないだけましだ』等と思いながら、試作を重ねる。隼人は菓子作りの腕前を、淡々と、しかし確実に上達させていった。最終的には、目分量でほぼ正確に材料の必要量を取り分けられる程になった。
そして迎えたのが、竜馬にチョコを貰ってから一ヶ月後の今日だ。
「すげぇうまそうだけど、これ、ほんとに俺が食って良いのかよ」
「そのために作ったんだから、さっさと食え」
竜馬の向かいの席に腰掛け、隼人はその姿をじっと見守る。正直味には自信がある。しかし、自分の作ったものを好きな相手に食べてもらうというのは妙にドキドキするものだと、隼人は一ヶ月前の竜馬の様子を思い出していた。
「ん………じゃ、じゃあ、いただきます…」
竜馬がフィナンシェに手を伸ばす。
頬張り、咀嚼した瞬間、その瞳が目に見えてキラキラと輝いた。
「うめぇなこれ!」
飲み込んだ竜馬の第一声と笑顔に、隼人の口元は綻んだ。

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「え、これ神さんが作ったんですか?」
訓練帰り、休憩室に一番乗りした拓馬は、机の上に並べられた焼き菓子と、その意外な差し入れ人に目を丸くした。
「趣味というかな……昔からたまに作るんだ。昨日は休暇だったし久しぶりに気が向いてな」
嘘と本当が混じったような所長の言葉を、拓馬は疑いもせず感心した様子で聞いている。
「なんでもできるんですね」
「そんなことは無いが…お前と漠が来てからも歓迎の一つもしていないからな。今は戦闘の最中だからこんなことしかできんが」
多忙もあり積極的に参加したことはなかったが、平時は新人歓迎会などもそれなりに開いていたことを思いだし、隼人はまるで言い訳のようだと思いながら言葉を紡ぐ。
実際その通りだった。竜馬にはじめて食べてもらったあと、脳のデフラグも兼ねた趣味になった焼き菓子作りは、しかし彼と離れてからはそうそうしなくなった。
作り方を知りたいと言った翔のために、流れ上その頃のゲッターチームに振る舞ったこともあった。まだその存在になる前の婚約者のために休日焼いたこともあったが、いずれにせよその頃を境に久しく作ったことはなかった。
「全然構わないです!俺こういうのあんまり食ったこと無いんで…食べて良いですか?」
ウキウキを隠せない目で見上げられ、隼人は黙って一度頷いた。やはり普段の瞳はずいぶん、あの頃のあの男より大人びている気がすると思いながら。
「うまいですね!これ」
そんなことを思っているうちに、早くも一つを食べきった拓馬が感動したような顔で見上げてきた。
「……そうか、それはよかった」
隼人の瞳の奥に、ほのかだが確実に喜びの色が灯る。
しかし、次の瞬間、拓馬は休憩室のドアの方に走っていった。
「何処に行く?」
「すげぇうめえから、はやいとこ漠とカムイ呼んできます!他のやつきても俺らの分とっといてくださいね!」
「………そうか、わかった」
急いで走り去る拓馬の背中を暫し見つめ、隼人は、やはり彼は『あいつ』とは別の人間だと、どこか安堵していた。
はじめて竜馬に菓子を作った日、そんなに美味いなら弁慶たちにも食わせてやるかと少し意地悪なことを言ったら、竜馬は『こ、今回は俺に作ったんだろ…おれのだ!』と唇をとがらせ随分と幼く、愛らしい嫉妬を見せてくれた。
『なんだ、そんなに美味いか』と笑った後の出来事を思い出して、隼人は静かに目を閉じ口元に手を当てる。
(確かに、甘かったなーー)
普段人目につく場所ではそう言ったことはしたがらない彼が、シャツの襟元を引っ張った。そして、隼人に口づけたのだ。
唇のふんわりとした甘さと、『こないだのお返しだぜ』と言って笑った彼の上機嫌な笑顔は、ずいぶん久方ぶりに思い出した今でも、欠片も色褪せてくれないままだった。
(茶でも淹れてやるかな)
今ではもう、どうしても郷愁と切なさを拭いされないが、しかし変わらず柔らかく甘い記憶を思い出させてくれた彼の息子に感謝しながら、隼人は休憩室の横に併設された給湯室に足を運ぶ。
近づいてくる、三人分のずいぶんと賑やかな足音が、その耳に心地よく響いていた。

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類人猿を手術できる環境があるんだからもうなんだってあるだろと思って早乙女研究所の施設をどんどんねつ造で増やしていくスタイル
そのうちG→真期の施設拡張でサウナが出来たりするよ、私の脳内で

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