→幕の後 おまけ・未知の分岐(注意書きあり)

※ご注意!!!
チャンピオン版號(隼人は真ゲッターの出力テスト時に東京に出張に行っている設定。留守中に研究所が突然の死)→サーガ版號&真(竜馬達と共に研究所にいる)、みたいな話です。
かなり勝手な妄想と自己解釈で好きなように書いている部分があり、なおかつダメ人間が書いているせいでなんつーか不完全燃焼です。
勝手に色々やらかしてても構わないよと言う方、そのおおらかな心のままでお読みください…。

いつの頃からだろうか。
竜馬の中では、二つの記憶が混在していた。
一つは、真ゲッターのコクピット内で意識を失っていた所を、防護服を着込んだ隼人に必死に呼び掛けられて目をさます記憶だ。
救助され研究所の状態を認識した後、起こったことへの衝撃で竜馬は一時的に口が聞けなくなってしまった。代わりに隼人が、当時行っていた実験の内容から引き起こされた事象を推測し事情聴取や各所への対応に当たってくれた。竜馬は何一つしなくても、彼の問に首を縦横どちらかに振るだけで用を成すことが出来た。
友も師も仲間も…自分の目指していた夢すらも、突然に全てを失った筈だ。
それでも、隼人は一度も…微かな苛立ちすら見せはしなかった。
なにも無理はしなくていい。俺に委せて、ゆっくり休めと言って、何か言おうとする度に震えてしまう口元を、意思を示せない眦をそのくちびるで暖かく覆ってくれた。
それでも、隼人が優しくしてくれる度に塞ぎ込み、その顔が見られなくなっていったのは――。

だが、この記憶はどうにも、霞がかっていた。
なんだか、まるで自分が体験したことではなく、遠い昔の誰かの思い出を見ているような気すらする。
夢や幻想だは思えない。だが、本当にあった出来事なのかと言われると…違うのではないか、と思う。
竜馬が事実として認識しているのは、もう一つの記憶。彼と共に、遠い遠い未来の一幕を見た記憶だ。
隼人は明らかに高揚していた。自分達の関わるこのエネルギーの可能性、それがまさに無限大であろうことをその目で見て、知って。
どちらの記憶でも竜馬はその後彼と袂を分かつことになったが、こちらの…竜馬が今事実と認識している記憶の方が、ゲッター線の今後について話す時に揉めた。
絶対にあれを二度と動かすなと主張する竜馬に対し、どちらの記憶でも彼は同じように『それでも、人類を守るためにあれを動かすしかない日がくるかもしれない。その時俺はおそらく、ためらわずそれをするだろう』と言った。
一人きりの記憶の時には、ただただ彼のその言葉が悲しかったことしか覚えていないが、二人の…二人きりの記憶の時には、竜馬は冷静にそう判ずる隼人にひどく反発した。
反発するだけの気力が残されていた、とも言えるかもしれない。
だが、根底に流れていた悲しみはどちらも変わらない。
次にあれが動く時、俺は彼を失う。永遠に。
どちらの時も、その確信が強く胸の中にあったことは同じだった。
人類を…いや、ひょっとして 宇宙をも動かそうとしているのかもしれない『それ』の目的も、『それ』が自分に何をさせたいのかもわからなかったが、なぜかそのことははっきりとわかった。
そして、絶対に避けたいと思っていた。『それ』があるいはもたらすかもしれない侵略と破壊に塗られた世界の到来も、彼との別れも。
そう思った竜馬は、運命に抗おうとして――抗って、そして。

———————————————-

早乙女研究所を対恐竜帝国の基地とする―――。
各自迅速に実戦拠点としての配備をするように―――。
真ゲッターロボを格納している制御室で、隼人が部下達にそんな号令をかけるのを、竜馬は廊下からどこか上の空で見ていた。
竜馬の横には、先日あったばかりの癖に妙に訳知り顔をしている…なんとか教だったか。竜馬にはよくわからないが、とにかくどこかの宗教団体の権力者だというタイールが相変わらずおだやかな笑みを浮かべて立っていた。
道場に殴り込みに来た子供達…號達は、まだ意識を取り戻していないらしい。
「すごいですね、神さんは、あれだけの出血だったのに、まるで何事も無かったみたいに」
タイールが、部下に指示を出す隼人を見ながら呟く。
確かに、真ゲッターの力の暴走が収まった後、コクピットから降りてこず応答もしない他の同乗者達の様子を見に行った竜馬達が隼人のいるコクピットハッチを開けた時、彼の周りは血の海と言っても差し支えなかった。
おそらく身体中の…開いた傷から血を流しながら目を閉じうつむいている隼人を見て、竜馬は一瞬本気で彼が死んでしまったのではないかと思った。
『隼人!おい……隼人!』
『…俺は、平気だ…號達は……』
焦った竜馬が肩に手を置き名前を呼ぶと、彼は薄目を明け、そう言った。
『平気なわけねぇだろ!號達の様子はこれから見に行くけど…それより、隼人お前…!』
『気にするなと言っているだろう…平気だ。この程度の出血なら…まあ、救援が来るまで、動けそうには…ないがな』
肩に置いた手の上に彼の体温のある手を重ねられ、平気だと言われるとそれ以上言葉を続けることはできなかった。
実際、あれからそう時もたっていないのに今彼はまるで何事もなかったかの様に振る舞っている。だが、あれは。
「平気なふりがうまいだけだ。あいつは」
タイールにそう返した言葉は、自分で思っていたよりも幾分か冷たく響き、その理由に竜馬は自然と眉間に皺が寄るのを感じた。

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「とりあえずこれを着ろ」
流石に働き詰めが過ぎると思われたのか部下から休憩をとるように言われた隼人は、どうにも居場所がなくてそのあたりをぶらぶらしていた竜馬をつれて早乙女研究所の元自室に向かった。
周囲の壁をを簡単に補強して、簡易ベッドと彼の私物を無造作に置いているだけの部屋に入り、どうしたものかと思っていると隼人からフライトジャケットとズボンの上下を渡された。
「なんだこれ」
怪訝さを隠さない表情で、竜馬は訊ねる。
「俺のだからサイズは入るはずだ。お前のその格好はなんというか…馴染まないだろう」
「別に馴染む気なんてねぇよ」
「お前に無くても、何か聞かれる度にいちいち説明するのが手間なんだ。それを着ていればとりあえず関係者には見えるだろう」
確かに、じろじろと奇異な目で見られるのも、なんだかんだと詮索されるのも性にあわない。思わずなるほどと頷いてしまう理由を言われ、竜馬は仕方なくそのジャケットを羽織る。
昔よりは上背の差はなくなっていると思っていたが、やはり丈が少し、そしてそれ以上に袖が余る。
手足の長い彼の体格にあわせて作られていると思うと、ズボンの方に足を通すのがどうにもためらわれた。
「號達はどうなんだよ?」
聞くと、隼人は静かに首を横に振る。
「いつ目覚めるかわからん…こちらも気長に待つことはできんのだかな」
「そうか…」
苦々しく眉根を寄せる彼は、知らないのだろう。少なくとも一人…號はもうじき正気を取り戻すだろうことを。
「…最悪の場合には、俺とお前だけで行くことになるな」
覚悟を決めたように、隼人が呟く。その言葉の端に、彼の精神のある種の高揚を聞いて、竜馬は自分の眦が険しくなるのを感じた。
冗談じゃない。共にいけても、たどり着く場所が違うんじゃ意味がない。
…未だに当たり前のようにそう思う自分に気づき、竜馬は愕然とする。
「その気なら少しでも休んどけよ。また乗るにゃ血が足りねぇだろ」
それでも、そんなことは彼には言わない。いや、今は言えない。
「足りなきゃ足りないで構わん。闘いが終わるまで持てば、それでいい」
急ごしらえのベッドに腰掛けて、隼人は膝の上で指を組む。
「この方法しか、無いからな」
すまない。
結局、こうなってしまった。
言葉にのせぬよう、切り捨てた感情の深さが痛いほどわかる。
変わっていない。昔からなにも。彼は目的のためにならば迷いなく自分の痛覚を捨てる。代償に得た傷が、どんなに血を流そうとも。
そして彼の傷が――それが良いことかそうでないかは別として――人類には必要なのだ。
竜馬も、彼にそうさせている一人だ。いや、そうさせているどころか…。
「なっちまったもんはしゃあねぇだろ。號が起きた時用に、パイロットスーツ用意しとけよ」
言って、竜馬は隼人の横に腰かける。
「しっかし、こんなに窮屈だったっけか?ズボンなんて久しぶりに履くからわかんねぇや」
昔は当たり前だった筈だが、ごわつく感触は着物…というか胴着に慣れた今ではどうもしっくりこないものだった。
竜馬は横に隼人がいるのも忘れて、慣れないフライトジャケットの襟を正したり余り気味の袖口を捲ったり戻したりしていた。
「お前は…」
「ん?」
しばらく違和感に首をかしげていたが、ふと隼人がじっとこちらを見ていることに気づく。
なんだよ。と見つめ返すと、隼人は少し目を細めて、笑った。
ぎゅうっと、胸がつまる。
「…やっと、解放される筈だったんだがな…」
「…なんだよ」
心臓の音が変わるのがわかる。
ふと、竜馬は気づいてしまった。ここは彼の部屋だ。ベッドの場所はもとあった位置と同じだ。そして、先程から自分が懸命にその着心地に慣れようとしているのは。
まずい、と自覚する。しかし、お互いにそう思うのが遅すぎたようだった。
「…共に、礎になれると思ったひとがいたんだが」
婚約者がいたということは知っていた。別に驚くようなことではない。
竜馬にとて――どうにも押されっぱなしな上に、自分の人生に巻き込む気にはやはりなれず、去ってきたが――いいと思ってた女はいたし、彼とのことはもう終わったことだと、そう考えていた。
こうやって、再会するその時までは。
「どうも俺には、壊すことしか向いていないらしい」
唇の片側を少しあげた、斜に構えたような乾いた笑みは彼が昔からよくする表情だった。整った顔には似合いだと思うが、見る度に竜馬はどうも釈然としない感情を覚える。それは、彼がもっと穏やかに笑えることを知っているからだ。
「…そんなこと、俺に話してどーすんだよ」
「さぁな…ただ、何度もここで死んでもいいと思ったのに、結局今お前とこうして二人でいるのが不思議なだけだ」
「そんなもん、不思議がったところでしかたがねぇだろ」
気の無いふりをしながらも、竜馬は心臓の五月蠅さをどうにも無視できない。
この場所が悪い。ここから見える景色は、昔彼と口づけあった頃をどうしても思い出させる。
こんな年食った為りで、しかもこの渦中に少年の頃と同じように彼の言葉に期待するなど、滑稽以外のなにものでもない。
だが
「本当に…お前は相変わらず…」
「わりいな、お前みてぇに後先考える様にはできてねぇんだ」
「いや、それもあるが…。こんな時に思うのもまた……お前は、怒るかもしれないが…やっぱり…」
かわいいな。とあの頃と同じように言われ、竜馬はどうしようもなく頬に血が上るのを感じた。
「………おめぇは…なんだっていっつもそうなんだよ」
「すまん」
こんなことだけ謝るんじゃねぇ、と心中毒づきながら、竜馬はじろりと隼人を睨む。
少し困ったように笑う彼は思い出すだろうかと、心中をざわめかせながら。
こういう時の竜馬のこの顔は、ただの照れ隠しだ。
「隼人」
呼ぶと、彼の笑みが深まる。ほんの少し眦が緩むだけなのに、本当に嬉しそうな顔になる。
そうだ。この顔が好きだった。やっぱり変わっていない。何も。
「おめぇの、好きにすりゃいいだろ」
どうにも素直になりきれない時、竜馬が諦めたふりをしてそう言うと、隼人はいつもその唇にキスしてくれた。
隼人の、薄い唇の感触が好きだった。
いや、今でも好きだ。
あの頃より幾分か遠慮がちに触れるその味に、これからもずっと好きだと、竜馬は確信した。
今彼に好きにさせてやれるのが、この唇だけなことが腹立たしかった。

———————————————-

異常な出力で敵諸とも多くの人間を消滅させたその機体は、真ゲッター1の姿で格納庫に安置されていた。
「静かですね」
「あぁ、お前か」
格納庫の周囲にある柵に持たれて、竜馬はぼうっとその機体を眺める。
背後から声をかけてきたのがタイールだと、背を向けたままでもわかった。
竜馬とその少年以外には、出入り口を警備する軍人ぐらいしかおらず、格納庫はやけに静かだった。
「乗るんだろ、お前」
問うと、タイールはにっこりと笑って頷いた。
「ええ、そのために来ました」
「物好きだな」
毒づくように言うと、そうですかね?と首をかしげる。
「ここでゲッターロボを動かさなければ、人類は滅亡します」
人畜無害そうな微笑みを浮かべながら少年は、しかしその外見に反する不穏な言葉を紡いだ。
「動かしたっていずれは同じだろうが」
「そうですね。動かせば人類は長らえますが…いずれ、ゲッターの力を得たと思い込んで、ゲッター線…大いなる宇宙…との共存を忘れ、この力を自分達の制御下に置こうと躍起になることでしょう」
「それで、力に喰われて醜く滅びる…」
それが、竜馬が昔感じた人類の最後の姿だ。
直接イメージを見せられたわけではないが、肌に感じた違和感は、彼にその未来を直感させた。
「ええ、いずれは、そうでしょうね、でも…」
「変わる…か?」
だが、それは竜馬が良しとする未来では無い。
「変わる…どうでしょう?さすがの僕にも断定はできませんが…」
相変わらず、穏やかな笑みをたたえたままタイールは言葉を紡ぐ。
「全てがゲッターに向かうさだめだとしても、どう進むかまでは…」
こいつの話を聞いているときは、どうも胸のうちがしんとするから不思議だ。
言葉を続けるタイールを無言で見詰めながら、竜馬はそんなことを思っていた。
「いずれにしろ――時は、幾重にも織り重なって、ゆらぎながらあります」
言って、少年は竜馬の顔を覗き込んだ。
「真ゲッターの出力を、最大まであげる実験の時…」
導かれるように、唇から勝手に言葉が溢れる。
「ええ、彼はいない筈だった…」
タイールの言う『彼』とは、他ならぬ隼人のことだろう。
「本当ならあの時、あなたは彼を残して全てを…いえ、結局は彼も、失う筈だった」
「だが、結局結果は同じだったろうが…その時が、延びただけだ」
そうだ。あの時はただ数ヵ月、別離の時が延びただけだ。
「たしかに、あなたからすればそうかもしれません。でも、僕はそうは思わない。時が伸びたことにより、生き残る事が出来た人々もいる筈ですし…。変わりました。確かにあの時…それをしたのが、あなたか彼が…もっと他の、ともすれば全く関係ないなにものかの意識の影響かはわかりませんが」
少年の目が、変わっていく。実際には見たことはないが、当たる八卦見なんぞはこんな目をしそうだという色だと竜馬は思った。
「何かが、変わったはずです。あなた一人でなく、彼もあの未来を見たことで…そう、きっと、これから僕たちがする事の意味も、変わったはずです」
「さあ、どうだか」
あやふやに答えながらも、竜馬の心中には一つの『ひっかかり』があった。そうだ。確かにあの時運命が変わった。あの男は、ドラゴンと共に地下に潜ることとなった――。
「何よりもあなたが、変わることを望んでいる。人類の行方が…そしてそのために人類には――『彼』が必要だと、そう考えているはずです」
まるで、タイールの眼の中に映り込んでいる自分自身と言葉を交わしている様な心境だった。
年若い少年の唇から、心中を紐といた様な言葉がするすると現れる。
「次乗れば、既に限界を越えている彼の肉体と精神は、その出力に耐えられずに」
そうだ。隼人の体も心も、何度も何度もばらばらになったのを無理矢理継ぎ合わせてぎくしゃく動かしているような状態だ。次ゲッターに乗れば、どんな結果になるかは…目に見えている。おそらくなにも残らない。彼の肉体も、彼の精神も、何も。
もう永遠に『彼そのもの』には、会えない。
「――だから代わりにお前が乗るってのか?」
訊くと、その瞳に湛えてられていた不思議な色はふと消えた。
「え…僕ですか?」
「お前以外誰がいるってんだ。実際しらねぇけど見た目ガキじゃねーか。良いのかよ。ここで乗って」
しばらくタイールは、うーん…と何かしら考える様に腕組をしていた。
「弟が、いるんですよ」
「ん?おお」
突然家族の話を始めるとは思っていなかったの竜馬は、少したじろぐ。
「ちょっと年は離れてるんですが、やっぱりかわいくて…どっちにしろ大変な人生になっちゃうとは思うんですが…やっぱり生きて欲しいから、乗らないわけにはいかないんですよね」
『愛するものがある限り、闘い続けるしかない』
いつか、そう言った早乙女博士の姿が、少年とだぶった気がした。
「僕はおそらく、はじめから今乗るためだけに産まれてきました。でも、家族や…あなた方に出会えて、嬉しいと思う気持ちは、僕固有のものだと思っています。だから、乗りたくないとは思いません」
「…そうか」
そう言う少年の目は、痛いほどにまっすぐだ。
「迷いがないな…お前は」
そのくらい割りきれれば、こんな風に揺らいだ時を過ごさずこられたのだろうか。そう思い竜馬は、微かに眉根を寄せる。
「どうでしょう…あなたは、あなた方はきっと…迷うからこそ、運命を変えていけるかもしれないと僕は思っているんですけどね」
それは、僕の天分にはない事なんですよ、と少年ははにかむように笑う。
「いずれにしろ、人類がこのまま滅んではいけないと思っているのは、お互い同じでしょう」
「あいつが…隼人の野郎はこれから残しといた方が良いってのもか」
「そうですね……ゲッターのためにか、人類のためにか…」
「世界のために…だ」
初めは不思議だった。人間自体はそこまで好きそうではない彼が、何故自分と共にゲッターを乗ることを選んだのか。未知のゲッター線に対する純粋な知識欲か、世に憂いた天才とやら故の好奇心かと思っていたが、どうやらそれだけではないようだと竜馬はそのうち気付いた。
例え彼にとって愚かな人間にまみれていても、退屈でも、無情でも、彼は彼を内包するこの世界自体は、愛しているようだと。
自分の好きなようにしたいか、守りたいかが変わっただけなようだと。
「…あいつもそのうち、これるのか」
「さあ…本来は『全て無くなる』定めのものを『残す』だけ…とも言えますからね」
「―――あとは全部、あいつ次第…か…」
呟いて、竜馬はフライトジャケットの合わせをぎゅっと掴んだ。

———————————————-

太陽の位置が変わり、機体は夕映えを受けてより一層燃えるようだった。
再び一人になった格納庫で、竜馬は先ほどのタイールとの会話を、脳内で何度も反芻していた。
「置いていくだけ…か」
ぼんやりと、隼人の未来を思う。彼に対する時、その思考のたどり着く先は何度繰り返しても同じだ。
「………いなくなっちまったら、つまんねぇよな」
誰に語りかけているのか。彼にしては珍しく小さい声で呟く言葉を聴ける範囲にいるのは――おそらく、目の前の機体しかいない。
「なあ、お前にはお前の考えがある。そいつはわかったぜ――俺が…俺達が、お前らと一緒に行った方が、お互いのためにも良いってこともよ…でもな」
変わる――かもしれないとタイールは言った。
変えて――来たのかもしれないと竜馬は思っている。
「やっぱりまかせっきりは性にあわねぇんだ――俺は俺で、好きなようにやらしてもらうぜ」
強い思いが、何かを変えていけるかもしれないと言うのならば。
にぃっと、挑発的に口角を上げて、竜馬は真紅の機体を見上げる。
その眼に宿る焔の色は、赤い機体を映しこんでいるようで――実際には全く違う、彼そのものの持つ炎の赤だった。
「―――わりぃな」
ぽつりと、目元を切なげに歪めて呟く謝罪の言葉は、どうしても『ゲッター』に全てを委ねきることは出来そうにないことに対してか、今まで自分を慕ってくれた――そして自分の運命に巻きこんでしまった――人々に対してか、それとも…これから『彼』が得られたかもしれない愛に対して、彼の心を獲っていくことに対してか。
彼を、貰う。
隼人のこれからの運命をゲッターに縛り付けて、もう二度とそこから離れられないようにする。
横暴なやり方だったがそれぐらいしか、今の竜馬には彼の運命をこちらに引き寄せる方法が思い浮かばなかった。
「ごめん……」
次の――最後の謝罪は、彼のためだけに響いた。
何の確証もない賭けだ。それでも不安に潰されたくはない。この賭けに勝つには、とにかく信じる以外道はないのだ。
どういう風に別れを告げれば、彼は諦めずに…ずっと、忘れずにいてくれるだろうか。
いつになるかわからない彼との再会の時を思い、竜馬は次までのための別れの言葉を、考え始めた。

2013.8.18 UP

なんか毎回そうだけど何もまとまってないけど書いちゃったからとりあえず上げた感がすごいよね。すいませんでした。

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