→来るべくして来た世界:〔このままでいていい〕

※『別の宇宙の』隼人→←竜馬←←(極度のヤンデレ化)←←別宇宙のゲッター線
だったり新ゲはやりょうだったり
別宇宙のはやりょう(多分手と手が触れあってドキッとするぐらいの淡い関係だった)がちょっと可哀想すぎるっていうか隼人が苦労人過ぎるけど、全部終わった後再会しているから大丈夫だ…。上と同じく、本編終了後の話を勝手にグダグダ考えている妄想の側面が強いので、好き放題やらかしてても大丈夫な方どうぞー。

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何があってそうなったのか。ことの詳しい経緯は、此方についていくつかの宇宙の記憶を覗いているうちに知った。
あの『ゲッター線に満ちた宇宙』を、破壊の本能で支配していたゲッターロボ。その中枢にいたのは、やはり流竜馬だった。
しかし、そこに彼の意志は殆ど関わっていなかった。

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その宇宙の地球ではゲッターロボの外敵との戦闘が、恐竜帝国とやら――ネオやサーガの連中は覚えのある名前だというが、真や自分たちにはピンと来ない名称だった――との戦いのみで終わっていた。あとにはひたすら平和な時代が続いていた。
その中でゲッターエネルギーの研究は更に進み、より機動性を高めるため、パイロットの脳波を直接読み取り、半自動で操縦できるようにするシステムなども盛り込まれはじめていたようだった。

長く続く平穏。結構なことだったが、しかしともすればそれがあの不幸を呼んだ。人間は忘れる。ましてやあの世界での戦闘は日本の一部での局地戦だった。人々にはそもそも『己ら種の存続そのものへの危機が迫っていた』という自覚が希薄だった。
ゲッターエネルギーの軍事利用をめぐる、国軍と早乙女研究所の攻防。それが、あの世界のゲッターロボを、ただ破壊するだけのバケモノへと進化させた直接の原因だったようだ。
核と同等かそれ以上の破壊力を持ち、しかもそれのような環境破壊のリスクが伴わない。先の戦いで既に戦闘成果も上がっている。それは核以上の驚異に成り得るものだった。
ゲッターエネルギーに国が目をつけるのは『平和が続いていた』世界では時間の問題だったとも言えよう。
早乙女研究所はずいぶん抗ったようだ。彼らはゲッターを人類を守るためのものとして利用していたのだ。人類を守るための道具で人類同士が殺し会う。そんな馬鹿馬鹿しい提案を、彼らがのむわけがなかった。
その攻防の中で、事件は起きた。
軍の人間との議論の中でかっとなり、相手につかみかかった三号機のパイロット――あの宇宙では武蔵と言う名だったか――が、逆上した軍の人間が放った凶弾に倒れ、そして命を落とした。
それはあの世界の己にとって、愕然とする出来事だったらしい。もしも武蔵坊が同じ目に遭うと思えば、穏やかではいられないことは察するにあまりあった。
だが己よりもずっと、自分が護ってきたものに裏切られずたずたに心を引き裂かれていたのは、あの世界の竜馬だった。
どちらの自分も、そもそも人間というものに過度な期待などしていないのは同じだった。己の知る竜馬もどちらかと言えばそうだ。
だが、あの宇宙の竜馬は、どうやら随分と性根から素直な人間だったらしい。

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そのあとはすべて総崩れだ。
あの世界の己は、どうやら自分が軍に入って内側からゲッターエネルギーの対人兵器利用を阻止するつもりだったようだ。
もうひとつ、事態の深刻化を遅延させる手はあった。ゲッター線の戦闘利用。そのための技術を結集した粋物。つまりゲッターロボを破壊し関連資料を抹消してしまえば、その軍事利用が遅れることは明らかだ。
資料の抹消は、早乙女の手で行われていた。しかしそのやり方は奇妙なものだった。彼はその研究成果のすべてと共に、自分の生きた証ごと、ある日突然消えたのだ。
数日前から、早乙女の周囲に不思議な緑光の鬼火がまとわりついているだの、殺した筈の恐竜帝国の長となにか話しているところをみただの、所内では不穏な噂が広まってはいた。とにかくある日を境に、早乙女は失踪した。
その日は、武蔵の葬儀が執り行われる筈の日だったようだ。
おもだった所員や早乙女の家族は先に式場に移動していた。しかし、送別の儀が始まることはなかった。
遅れると言って研究所に残ったきり連絡がとれなくなった博士と、いつの間にか式場から姿を消していた竜馬、そして無くなっていた武蔵の死体。
彼の死体は竜馬の手によって奪われ、ゲッターロボ三号機のコクピットに乗せられていた。そして竜馬はそのままゲッターロボごと、早乙女研究所を出奔したのだ。
己の命を犠牲にしても、それを破壊するために。
竜馬が早乙女博士と示し会わせていたのかは、今となっては解らない。だが、どちらにしろ、向こうの自分もどうやら置いていかれたことには変わりないようだった。

『バカ野郎!早まるなリョウ!』
異変を察して研究所にとって返し、なんとか司令室からゲッターのコクピットに通信を繋ぎ、隼人は竜馬を説得しようとした。先程までは自分と同じ喪服に身を包んでいた竜馬は、パイロットスーツに姿を変えゲッターと共に空にいた。
彼が何を思って何をなそうとしているのか、隼人にはいやというほどに理解できた。
心中では無理だとわかっていても、どうしても諦めきれなかった。
『隼人、おめぇだって言ってたじゃねえか、壊しちまうのが一番いいってよ』
『っ!だ、が、なぜ、お前が…』
『後のことは、おめえにしか頼めねぇからだよ』
『――』
そう言った竜馬の瞳に浮かんでいるのは、信頼の情以外の何ものでも無い。だから、隼人は二の句が次げなかった。
『博士がいうには、こいつの装甲は熱圏突破までもつようになってねぇ。俺は今からこいつで武蔵と一緒にギリギリまで上昇する。なぁ、隼人、こいつが落ちたら――』
『りょ、うま』
それは、己の死を意味する言葉だったはずだ。しかしそれを説明する竜馬は、やけに冷静だった。だが。
『あとはよ――頼んだぜ。…隼人。』
最後に己を呼んだ声は、少しだけ震えていた。
『――リョウ!竜馬!』
隼人の制止の言葉は振りきられた。ぶつりと回線が切られ、モニターはブラックアウトした。
歪んだ運命の輪はぎこちなく静かに、だが確かに回り始めた。

だが、ゲッターが爆発し落ちることはなかった。
向こうから切られた筈のモニターが、再度研究所と繋がったのは、ゲッターが成層圏を突破する寸前だった。
『!――りょう……ま!?』
『っ――ぁ、――はや、とっ?――』
ザ、ザザ、ザと、雑音のなかに隠れて、竜馬の声が聞こえる。
モニターに映ったコクピットの様子がおかしい。
竜馬の姿が見えない。隼人の目の前に写し出されたのは、コードの海だった。恐ろしいのは、その意思を持たぬ筈の回線たちが、うねうねとのたうち蠢いていることだった。
『どうした!竜馬!リョウ!』
『――――き、けんだ――隼人、こいつを――こ、わせっ――』
そのとき何があったのか。隼人がそれを知るのは、ずっと後のこととなった。
成層圏に近づいた頃だ。竜馬はただ念じていた。壊れろ。俺ごと、消えてしまえと。
その脳波が、ゲッターに影響したのだろうか。試作中の半自動操縦システム装置はオフになっていたはずなのに、一度人類の脳にコミットする方法を覚えたゲッターが、自発的にそれをしたかのようだった。
それは、ゲッターから竜馬への、愛するものに拒絶されての逆上と思えなくもなかった。しかし同時にそれは、主命への忠実な、絶対的服従のようにも思た。
とにかく、彼の脳波にコミットし、何らかの影響を受けたゲッターは、まず初めにコードの触手で竜馬を縛り付けた。そして、彼を自らの胎内に取り込み、一体化し、竜馬の望んだ『破壊』を実行し始めた。
『竜馬!何があった!どこにいる!』
『………を、……やと』
『竜馬!』
隼人の呼び掛けに答えてか、コードの渦の中からずるりと、竜馬の片腕が這い出た。
顔をおおっていたコードをなんとかずらし、竜馬は瞳と口元を隼人の前に覗かせる。その瞳は、常軌を逸し始めているようだった。
『バリア、はれっ…隼人っ…こいつを、俺を……ころせっ!………』
『竜馬!!?』
『っ……は、やとっ、早くっ!……あぁッ!』
『神さん!上空のゲッターの様子が!』
『――クソ!バリア展開!』
当番で残っていた研究員たちが、異変を察して司令室に駆け込む。隼人が研究所周囲にバリアを展開させた直後だった。
ゲッターロボが上空で異常発光し、その緑の光があまねく地上に降り注いだのは。
それは、人類の有り様を根本から変える光だった。
現世人類はその瞬間から旧人類となり『機械と融合した新しい人類』の、殺戮と破壊の世紀が幕を開けた。

———————-

「ん、な、なんだ、隼人。今日はずいぶんはええじゃねえか!」
部屋について扉を開けるなり、竜馬が駆け寄ってきた。
「あぁ…」
「な、なんだよ」
本人は隠しているのだろうが、隼人を待ってそわそわとしていたのだろうことはそのしぐさや表情でバレバレだった。
博士の言う通り帰ってきて正解だった。そう思いながら無表情のまま、竜馬の頭に手を置きゆっくりと撫でる。竜馬は頬を赤くして、子供扱いに少しすねるような態度をとった。
しかし、嫌ではないのだろう。はねのけたり避けたりはせずに、隼人にされるがままにしている。
20そこそこで同年代だった頃も思わなかったではないが、年が離れた今、竜馬のそういった仕草は隼人にとって逐一可愛くて堪らないものだった。
可愛い。竜馬に向けるその感情も、己の感情を吐露した今となっては非常に自然に表現できる。

「おい!隼人おめぇいつまでやってんだよ!」
「嫌か?」
「っ!や、や、やじゃねぇ、けど…」
竜馬の方も、昔と比べると随分と素直に感情を示してくれるようになった。
照れる竜馬をそうしたい思いのままに抱き締めて、隼人は彼に出会うまでは縁遠かった『幸せ』という感情に暫し浸った。

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結論からいうと、先の宇宙で倒したあのゲッターには、竜馬だけではなく、隼人も武蔵も乗っていた。
武蔵は死体のまま三号機に取り込まれ、隼人は――二人より随分と年を経てから、ゲッターに取り込まれた。

あの緑光が世界を覆った後、人類の有り様は一変した。機械と人間は一体化し、幾らかでも肉体に機械を取り込んだものたちは兵器のごとき性格へと変容した。
緑の光に照らされたものたちは、気が触れたように破壊と闘争を繰り広げるようになった。竜馬が真炉心のテスト飛行で飛んだのは、その頃の世界だろうと思われる。
彼らの目的は一様に、より強くなり、天に座す巨大なゲッターの一部と化すことだった。
生き残った旧人類も、その殆どは新型の人類に駆逐された。只、あの光線を免れた早乙女研究所の一体だけは、昔のままだった。
もはやこの世界に以前の人類の有り様を覚えているものなどいなくとも、隼人にとって重要なのは竜馬との約束だった。
彼をどうにかしてあの中から救いだし、混沌に満ちたこの世界を止める。それが目的だったが、しかし、状況は非常に不利だった。
早乙女はいなくなり、彼の持っていたゲッターロボの資料も残されては居ない。その内容を覚えているのは隼人と、運よく緑光の影響を受けない場所にいた敷島博士ぐらいのものだった。
しかし、隼人はただじっとしていたわけではなかった。他の人類と形は違ったが、彼もまた、バリア越しとは言え強大な威力で放たれたゲッター線の影響を受けていた。
それは、常軌を逸した頭脳として発露した。緑の光のなかで隼人は、人類がこれまで獲てきた叡知の総てを、瞬時に理解した。明らかなオーバーロードだ。しかしもとより人並み外れていた彼の頭脳と心身は、それに耐えきった。
だがそれでも、隼人は竜馬の場所に届くことは叶わなかった。はじめは単純に物理的な破壊も幾度か試みたが、効かないどころかあのゲッターはそれらを喰らって更に強くなる。
倫理を越えた実験――人体クローンの製造――に手を出したこともあった。自分を含めたゲッターパイロットに適正のある人物のクローンを送り込み、なんとかゲッターの中に潜り込ませ、内側からの破壊を試みたのだ。
己も他の人間も上手く『製造』出来たが、何故か流竜馬だけは作り出すことが出来なかった。それでも、隼人は何度も彼を作った。例えドロリと溶けて消えてしまうとしても、気の触れた方法だとしても、一瞬でも彼が自分の目の前に姿を顕してくれることが、隼人のくずおれそうになる心を支えていた。
幾度か上手く行きかけた個体もいたが、途中でクローン体に限界が来たり、いよいよ竜馬の場所までのぼるというところで謎の墜落を遂げたりで、結局そこにいくことは叶わなかった。
そんな日々が長く長く続き、流石に手詰まりかと思った頃、隼人の前に意外な人物が現れた。
確かに消えた筈の、早乙女博士だった。
『博士、一体今までどこに――いえ、なぜ、今』
『隼人、わしの言うことをよく聞け。そして実行しろ』
『……』
失踪したあの日と全く変わらない姿の早乙女は、隼人に淡々と語りかけた。
『数週間後、あのゲッターは地上に降り繭を作り始める。お前はその時ゲッターに乗り込み、手動運転でゲッターの出力を最大に上げ、教えた方位にゲッタービームを打ち込め』
『繭を――?一体どういうことですか?博士』
『武蔵が死んだ後からだ。ワシが何者かに呼ばれるようになったのは。そしてその声に応え、ワシはこの存在で確認できるすべてを見てきた。この先ゲッターが、そして宇宙がどうなるか。このままいけば確実にゲッターは地球を支配する。そしてそれだけではない。太陽系を、銀河を、この宇宙の理をも、いつしかゲッターは総て奪うじゃろう』
『――』
『恐ろしい話じゃ。だが、それだけで終わりではない。この宇宙の総てを食い尽くしたあと、ゲッターは更に他の宇宙に干渉するはずだ』
『他の、宇宙に――!?』
『それはならぬことだ。そして残念じゃが、すでにそれを止める方法は1つしかない』
早乙女の言ったその言葉の意味がにわかには理解できずに、隼人は聞き返す。
『あのゲッターを倒す見込みのあるゲッターチームがいる宇宙。それはあのゲッターもいつしか狙う場所に相違無い。
しかし、こちらのゲッターがその宇宙に目をつけてからでは、すべては手詰まりになる。先手を打ちその宇宙に干渉する。あのゲッターを倒せるだろうゲッターロボを、こちらの宇宙に呼び寄せる』
早乙女の提案した内容の途方もなさに、隼人は目を剥いた。にわかには信じがたい内容だったが、今となってはどんなことも非常識なことではなかった。
『わしの見立てでは教える方位に特異点がある。ゲッタービームを撃ち込めば時空震が起こり、別の宇宙とこの宇宙が繋がる』
『繋がる…だが、そんなことをして向こうの宇宙に影響は?』
『あるじゃろう。時空の扉が開き次第、ワシはある男に連絡を取り先を急がせる。気の遠くなる方法だが、こうなった以上あれを止めるにはこの方法しかない』
そう言って、早乙女はめずらしく深い息を吐いた。珍しく、肩ががっくりと落ちているように見えた。
おそらく本当に、どんなに探してもその方法しか無かったのだろう。
『特定の誰かが何かを大きく間違えたわけではない。だが、ゲッターは――あぁ、もう時間だ。済まない。隼人、あとは任せたぞ』
隼人の制止の声も聞かず、早乙女は次の瞬間、緑の光となり目の前から消えた。

はじめは疲れのあまり非現実的な夢でも見たのかと思った。だがそれから数週間後、ゲッターは本当に地中に降り、繭を作りはじめた。
隼人は意を決してその胎内に潜り込み、かくして早乙女の遺言を果たした。
機械とコードにまみれた元ゲッター1のコクピットに入り込み、なんとかゲッターを操縦し、最大出力で撃ったゲッタービームのその威力は、既に隼人の知るものではなかった。ビームの軌道上にあった月の真ん中を貫き、その光線はまるで宇宙のすべてに己の存在を誇示するかのように放たれた。
己にできることは総て終った。
そう思った直後だ。隼人の背後にコードの繭が、がくりと音をたてて落ちてきたのは。
『………?!』
後ろを振り向くと、無数のコードに手を吊られ足を捕らわれ、憔悴した表情で眠っている竜馬がいた。
『っ!竜馬!?リョウ!』
最後の別れの、あの日のままの姿だった。堪らず駆け寄り、殆ど無意識にその頬に手を伸ばし呼び掛けた。竜馬の肌から返ってくる弾力は若々しく、隼人はあれから随分と長い時が流れたことを、今更のように実感した。
『、やと』
『竜馬!』
『は…や、と、にげ…ろ…』
力なく瞳を見開いた竜馬の、呟いた言葉の意味を理解した次の瞬間だった。
隼人がコードの束が変形した機械の鉾に、背後から心臓を貫かれたのは。
『か、はっ…』
どうやら昔の馴染みでも、侵入者と見なしたものには容赦がないらしい。
貫かれた左胸から急速に緑の光に包まれ、隼人の身体は実体ではないものに変換されていく。内腑も骨も、たなびいた白衣も、吐いた血さえ緑に染まり、チリチリと空中に消えていった。
『りょ、うま…』
視界のすべてがゲッター線の色に染まっていくなかで、隼人はなんとか竜馬に手を伸ばした。
(すまない。泣くな。――これで、お前を救えるはずだ、だから…)
隼人の姿を見て、ポロリと一筋涙を流した竜馬の頬を、隼人は力無い指先で撫でる。
(泣かないでくれ)
せめても、と目の上に手をあて、その瞳を指先で閉ざしてやる。
そこまでで、隼人の意識はこときれた。
三つの絶望を喰らった機械の繭は、この宇宙の総てを破壊する夢を見て、暗い胎動を繰り返していた。

———————-

全く。何があったか知るためとはいえ胸糞の悪くなるものを見せられたものだと隼人は思った。
ゲッター線の軍事利用。それは元々隼人達がいた宇宙でも、あるいはあり得たかもしれない結末だった。というより実際その計画は、ある程度動き始めていた。
しかし、その動きを直接的に阻止したのは――。竜馬にそれを言われて、隼人は「結果論だな」とだけ返した。
早乙女博士の言っていたある男とは、違いなくもうひとつの宇宙の自分だろう。地獄の釜が開いたあの実験のあと、早乙女は幾度か『自分自身と問答する夢を見る』と呟いていたと、敷島から聞いていた。

しかし、結局すべてが解決したのは、あの宇宙で自分達があれを倒したときだ。竜馬と武蔵が取り込まれてからどれだけの時間が流れた?五十七億年近くだったか?まったく良くできた計算だったことを思いだし、隼人は少しシニカルに口角を上げる。
「なァに一人でにやついてやがる」
「ん…あ、いや」
ソファの隣に座った竜馬に突っ掛かられ、隼人は我に帰った。
竜馬を一度元の宇宙に帰したのは、彼があの宇宙で一人戦っている間に、その存在に気づき永い眠りから魂を目覚めさせた向こうの隼人と武蔵だったようだ。まぁ、お陰さまでこちらは竜馬と正式に懇ろとなれた訳だが、向こうの自分の処遇には流石の隼人も同情せざるを得なかった。
「いや、前の宇宙で戦ったやつらのことを少し思い出していた」
「そうか。…なぁ隼人、おめぇ、あいつらもう一度会えたとおもうか?」
「さぁな」
「なんでぇ、薄情なヤツだぜ」
「元からだ…サーガが言うには、すべてが終わったあと、ゲッターチームはそれぞれいくべき場所へいく。あいつらは一緒に行ったんだ。大丈夫だろう」
「そう、か…ま、ちぃっとばかしよわっちくても俺とおめぇだしな」
そう言うと、竜馬は少しほっとしたようににいっと笑った。つられて、隼人も控えめながらも笑みを返す。
新ゲッターチームに倒され崩壊したあのゲッターロボは、どこからともなく現れた時空の裂け目に消えていった。その時空の狭間に一緒に滑り込み、竜馬たちはこの宇宙にたどり着いたのだ。
ここはまるで、戦い続けることでしか存在することが出来ない魂のために用意された常世のようだった。だが、どこであろうが構わない。目の前の男と居られるのなら、何処であろうと――。
「そう言えば、司令から聞いたんだが」
「う!」
本日の本題を切り出そうとすると、竜馬の肩が分かりやすくぎくりと跳ねた。
「何でもひとつ、こちらの願いを聞いてくれるらしいな」
「っ…司令のおっさんー、ね、ねたばれしやがって」
「あれもたまには良いことをするものだ」
「うるせー!だいたいてめぇが帰ってこねぇからっ…!」
しれっとそう言って、隼人は竜馬の腰に手を回す。
「…!は、はやとっ…んっ」
ぎゃいきゃいさわぐ竜馬を黙らせるため、隼人はその顎を掴み無理やり自分の方を向かせ、半ば強引に口づけた。
「ん、んん、ん~~ッ!」
正式に恋仲となってから、竜馬は変わった。その甘ったるい関係自体に慣れていないせいか、普段のやり取りのなかでも、褥の中でも、以前よりささいなことで恥じ入ることが多い。
隼人としては、その度に竜馬の反応が新鮮で楽しくて可愛くて柄にもなく抱き潰してしまいたくなるのだが、あまりしつこくして嫌われるのも困るので出来るだけ気付かないフリをしていた。
「っは…ぁ、なんだよ。おめぇ、なんかあんのか?俺にやってほしいこと」
長いキスから解放された竜馬は、少し困ったように眉を寄せて、上目遣いで隼人に尋ねる。
「…ある。お前以外には出来ないことが」
もう一度キスしたくなる衝動をぐっとこらえて、隼人は答えた。
「え、な、なんだよ」
「側にいろ」
かしこまった隼人の様子に、少し構えた竜馬にそう告げた。
「離れるな。ずっと、俺の側にいろ」
「え…」
じ、と竜馬の目を見て告げる。これだけだ。己が願うことは。
しばらくためらったあと、竜馬は唇を開いた。
「そんなもんは、きけねぇ」
「…!」
ふいっと視線を逸らしてそう言う竜馬に、隼人は後頭部を思いっきり打たれたようなショックを覚えた。
「………な、何故だ、竜馬」
瞬時に乾いてしまった喉から、なんとか絞り出して訊ねる。すると意外にも竜馬は、自ら隼人に抱き着いて、その肩に顔を埋めてきた。
「だからよ…あ、当たり前じゃねえか!俺とおめぇが一緒にいるのは、もーあたりめぇなんだよ!だから、ンな当たり前なモンはダメだ!他のにしろ!」
「!…」
竜馬の言葉に、隼人は目を見開いた。だがしばらくして、その頬には随分と柔らかな笑みが浮かんだ。
「…わかった、じゃあ…」
「ん、な、なんだよ」
隼人は、竜馬の身体を一度起こす。そして、開いたまま座っている脚を閉じさせ、ジーパン越しの腿の上に、頭を預けた。
「え、おめぇ、これっ…」
膝枕じゃねえか!そう思って、竜馬の頬はみるみる赤くなっていく。
「こっちは調べもので疲れているんだ。しばらくこうさせろ」
「~~~っ、俺の膝なんて、かってぇだろ」
「枕は固い方が好きなたちでな」
何だかんだと騒ぎながらも、竜馬はどけよとは言わなかった。隼人は恋人の膝の上で、しばしその感触を楽しんだ。なでたりさすったり、ぎゅっと合わされた腿の間にいろいろ挟み込んでみたりしたくなくもなかったが、それはまた後で楽しめばいいと自制する。
「…ん?」
暫しの後、隼人の髪に竜馬の手が触れた。
まるで幼子にするように優しく撫でられ、隼人はその心地よさに驚く。
「はやと。そのよ…いつも、お、おつかれさん…」
「…いや、俺もその、ここのところあまり帰ってこられなくて悪かった」
自分に与えられているものだとは信じられないほどあたたかく触れる竜馬のてのひらに毒気を抜かれ、隼人はめずらしく素直に謝った。
「ぁ。はやと…」
自分を撫でてくれた竜馬の腕を取り、隼人はその手の甲にそっと口づけた。
もう、このままでいていいのだ。ずっと。
「――お前にしか、出来ないことだな」
「?」
胸の奥を満たしていく、己には似合うはずもないと思っていた感情に、隼人は身を任せ、瞳を閉じて竜馬の膝に体重を預けた。

――――――――――――――
2015-09-30

早乙女博士の夢に現れた向こうの宇宙の早乙女博士「パイロット3人集めてね。一人目はKARATEKA、二人目は頭が良すぎて逆におかしいイケメン、三人目は大喰いでちょっとアレ」
早乙女博士「ちょっとアレ…」

てなかんじで、こんな適当な妄想語りに付き合ってくださった方ありがとうございました…。
隼人が目覚めた時点で竜馬の意識に何とかコンタクトしようとしていると思うので、向こうの二人も最後に竜馬がゲッターから解き放たれた後は再会して消滅前にキッスの一つでもしてんじゃないかな…同じコクピット内にいるし。ていうかそうじゃないと悲恋過ぎるこれと思いましたが、そこまで書くとただでさえ遠く離れている原作を更に遠く離れすぎるので割愛しました。向こうの宇宙の敗因:ゲッター線が竜馬にヤンデレすぎた。

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