酒精溶け(サーガGと真の間。隼竜。R15ぐらいのぐだぐだ)

—————————

想定していたより幾らか大きな音を立ててドアが閉まった。その事は全く気にせず、二人は隼人の自室の、きれいにシーツがセットされているベッドの上に縺れるように沈んだ。
「んんー…飲んだなぁ」
「そうだなぁ……」
緩慢に抱き合いながら、二人ともいつもよりどこか間延びした、暢気な声音で話す。
浅間山公園内に設立予定のゲッター博物館。リストアップされた展示物の準備がようやっと今日の夕方に終わった。
一番納品までに時間がかかったのは、初代ゲッターロボの再現機体だった。
レプリカでも構わないと望まれたにも拘らず、研究所が用意したのは、張りぼてではなく当時の機能を出来る限り再現した機体だった。開発には隼人も関わっていたが、準備中、竜馬と弁慶は「おそらくお前らも驚くだろうことになっているよ」としか聞かされていなかった。なんだか知らんが楽しみだと言い合っていた二人だったが、実際完成した『それ』に、竜馬は驚き口をパクパクさせ、弁慶は初めて見た初代機に感嘆の声をあげていた。
ドラゴンほどの性能ではないとはいえ戦闘にも充分使える代物だ。観光地に設置するにはやや際どいのではないかと思いつつ、同時に『まぁ、何かあったときに使えるか』と考えた竜馬は黙った。
納品日の夕刻近く、博物館のメインフロアにゲッター1を格納し終え、研究所の対応チームにはほっと胸を撫で下ろせる雰囲気が漂った。
その後、誰が言うともなく今日はもう仕事は終わりにして、博物館完成の前祝いパーティをしようと言うことになったのだ。
許可の元、出身地も年齢も違うメンバーがそれぞれ持ち寄った地酒やワイン、発泡酒やらをとにかくあるだけ並べ、休憩室で宴会は開かれた。
色々と作業漬けになった代わりに翌日は非番となったゲッターチームも、いつもよりずいぶん羽目を外した。
解散の頃には、弁慶は飲みすぎですやすやと寝こけてしまっていた。
重い身体を部屋の前まで引きずっていってやり、そのあと二人はふらふらとした足取りのまま、特に何も考えず今のように片方の部屋にしけこんだわけである。
「部屋、会場よりあっつくねぇ?」
「締め切っていたからな。…しかしリョウ、さっきより酒が回ってるんじゃないか」
「ん……確かにそーかも……んー、あっちぃ」
組敷いた竜馬の身体がモゾモゾと動くのを、隼人は機嫌の良さを隠さない笑顔で見下ろす。
ずいぶん酒くさい自覚は二人ともあったが、こうなるとお互い様だ。
隼人が何の確認もなく、したいがままに緩慢に竜馬の唇に己のそれを寄せると、特に抵抗なく唇が開かれた。最後に煽ったウィスキーの苦味が残ったままの舌先を遊ぶように絡め合わせ、しばらくして気が済んだ二人は、どちらともなく唇を離した。
「ん……しかしよぉ、はくぶつかんっつても、俺等のヘルメットとか見るやついんのかよ」
ついさっきまでのキスが、まるでいつも通りの呼吸であったかのような自然さで、竜馬は言葉を続ける。
「ふ、さぁなあ、その辺りのリストアップは向こうに任せたらしいが」
機体や内部の部品はまだ解るが、自分達が普段使っていたヘルメットや護身銃(こちらはレプリカだ)まで展示したいと先方が言い出したのには、ゲッターチームも苦笑するしかなかった。
今のところ、メインパイロット中二人の出自があまりに特殊すぎることもあって、ゲッターチームのパイロット名については一般公表はされていない。しかし『個人』の匂いがするものは『物語』を想起させる。そういうものが、一般人向けの展示品のなかに欲しいというのが先方の依頼だった。
「おめぇのヘルメットなんかかなり良い場所に置かれるじゃねぇか」
「全く、解らん趣向だ」
口では気の無いことを言いながらも、まんざらではなさそうな表情を残し、隼人は組敷いた肩に額を埋める。
体温が上がったことにより発汗した鎖骨の窪みをペロリと舐めると、竜馬は小さく声をあげた。
「ん、んん……」
ちゅ、ちゅ、と幾度か敏感な場所に口付けられる。あることに気づいて、竜馬は珍しく、困った風情の笑みを口元に湛えた。
「くそ……抱きてぇ」
「諦めろよ、どう考えても『そう』ならねぇだろ、コレ」
隼人が明け透けに欲望を告げるのは珍しい。悔しげな理由は、それが不可能であることを、彼自身が一番よくわかっているからだった。
重ねあった下腹部はお互い熱くなっていたが、何せ酒が入りすぎだった。二人とも勃ちそうもない状態だ。
「あっちいのにふにゃふにゃじゃねえか。まー、俺もだけど」
衣服越しの胯間同士をわざと擦り付け、竜馬は笑った。
「へへ、なんかぐにぐにして……んっ、こ、こらっ…ん、やめっ!」 
どうやらいたずら心が隼人の勘にさわったらしい。思いきり首筋に口付けられ、弱い耳穴を舌でくちくちと愛撫されて、竜馬は緩慢な身体でもがく。
「や、やめっ、うぁ…」
耳穴に挿入される隼人の舌はいつもより熱い。快感が緩やかに背筋を登っていき、竜馬は焦る。開発されきっているといっても過言ではない肉体は、どこにでも快感のスイッチがある。下手に焚き付けられたら、よけい悶々とするのはのおそらく竜馬の方だ。
「なっ……ぁ、や……ん、んんっ……こ、こんなこと、して、何になるってんだよ!」
作業着のズボンからタンクトップの裾を抜き出し引き上げ、隼人は乳首にまで舌を這わせる。ペニスとは違いじわじわと尖るそこに、隼人は笑みを浮かべた。
「ぁっ……ん、んっ…やめ、ろっ」
「珍しいな。お前がそんなにいやがるのは」
「たりめーだろうがっ、ど、どうせ…やれねぇのにっ……んっ」
このままでは射精もなければ挿入によるドライオーガズムも無い状態で生殺しだ。最近では珍しい、焦って嫌々とかぶりをふる竜馬の反応が新鮮に映ってしまった隼人は、改めてこのまま抱けないことが残念でならなくなった。
「あーっ…あ、あっ」
元々酔った頭だ。我慢できず、隼人は竜馬の左右の乳首をつまみ上げた。
「ぁっ……もっ……や、やめやがれっ!明日!明日にしろ!!」
やはりいつもより鈍い反応が気に食わず、何度もくにくにと乳首を捏ねていると、竜馬にぐっと肩を押し返された。
同時に、隼人はやっと我に帰り指先を引っ込める。
「本当だな。酔っている間のことは忘れた--とか言うなよ?」
「っ……わあったからもう触んな!」
両腕を胸を庇うようにクロスさせ、いつもより無作法に触られた乳頭を包み隠す。竜馬の姿にむなしい炎がまた立ち上りそうになった隼人だったが、竜馬にじっとりとした瞳で見つめられ、渋々組強いていた身体から離れ、その横に寝転がった。
「……しかし、本当に暑いな」
なぜか、竜馬の身体から離れた瞬間自覚し、隼人はポツリと呟く。
「ん……俺、帰るか?」
「馬鹿を言うな。明日朝一に風呂に入って、そのまま『する』んだ、逃げるなよ」
くっついていることをためらった竜馬に、食いぎみに反論し、隼人はサイドボードをまさぐり空調のリモコンを操作し、タイマーのスイッチを入れる。
「あっ…こら、しねーんだろ?」
空調の起動音がすると共に、起き上がり再度自分を見下ろした隼人に、作業着のウエストベルトを緩められ、竜馬は戸惑う。
「しない--が、寝るのに窮屈だろう。脱がしてやる」
見上げた隼人は随分と機嫌が良さそうだ。そういえば酒が入っていたことを思いだし、竜馬は『お前なぁ』等といいながらも、いつものように腰をあげてズボンを下ろす隼人を手伝う。
「お前も脱げよ」
「あぁ、頼む」
両腕をあげて、向かいあう隼人の上着のボタンを外す。しばらく、二人がお互いの服を脱がしあう衣擦れの音がベッドの上に響いた。
「あっ、パ、パンツはいいだろ…」
「脱がしたい」
「脱がしたいってなぁ……」
ボクサーブリーフにまで手をかけた隼人の、どこか幼児のように頑なな言葉の端には、彼の酔いがほのめいていた。
「お前も脱げって」
「うん」
「うんって……機嫌よすぎだろお前」
竜馬も隼人の下着をおろす。ベッドの下にお互いの脱いだ衣服が散らばった頃、一糸纏わぬ姿になった二人は、けして広いとは言えない研究所支給のベッドの上で身体を重ねあっていた。
肌にぴったりとフィットする抱き枕でも得たかのように抱き寄せられ、竜馬は普段とは違う雰囲気に妙な照れを感じる。
こんなに引っ付いているのに肉体が興奮していないのは初めてだった。自分の太ももに触れているのに、隼人の寝たままでも存在感があるソレがピクリとも反応していないのに、少し悔しさを覚えて竜馬は自分の得た感情におどろく。
しかし同時に、意識がどこかふわふわとしたほろ酔いの状態で好いた相手と身体を触れあわせるのは、普段はりつめている筋肉もすべてほぐれてしまいそうなほど幸せだった。竜馬は抱き寄せた腕に応えるように、自分の腕を隼人の裸の背に回す。
ほどよく冷房がきき始めた部屋で、お互い酒火照りした身体の熱さを確かめあう。妙に贅沢な時間だった。隼人が竜馬の腰に手を滑らせたり、竜馬が隼人のいつもより汗ばんだうなじを指でなぞったり、しばらくお互い無言で、相手の身体を撫であう。
「いつもより汗かいてんな、お前」
「シャワーは浴びてないしな、お互い様だ」
「うわ、そ、そこに鼻つっこむな!ぜってーやべぇだろ!」
「あぁ、いつもより濃くて良い。勃たねぇのが残念だ」
「~~~~おめぇなぁ」
腕を持ち上げて腋の下に舌まで這わせ始めた隼人を退かし、竜馬はもう何もさせないようにその手のひらを握る。ようは手を繋ぎあう形になってしまった訳だが、酔いのせいかその恥ずかしさはあまりなかった。
「つうかよ、明日二日酔いになったらどーすんだよ、ヤるもクソもねぇぞ」
「迎え酒でもしてヤるか」
「あのなぁ……またフニャフニャになっちまったらどうすんだよ」
「あぁ、それは困るな」
本当に『困る』といった風情に眉を寄せる、隼人の年相応な表情を見て、竜馬は思わず吹き出す。酒が入っていたためか、その声はいつもより随分と上機嫌そうに、ベッドの上に響いた。
「どうした?竜馬…」
怪訝そうに顔を覗きこむ隼人に、竜馬はふるふると頭をふる。
「くく…なんでもねぇ、お前、そーやって普通のツラしてると、格好いいのに……」
「か……」
『たまにみょーに抜けた面すんの、楽しい』という竜馬の言葉は、隼人の頭に入って来なかった。
言われたことは初めてではなかった。しかし、普段あまり、竜馬にそう思われている自信はない。そもそも彼は記憶をなくしていたとはいえ、命のやり取りをする瀬戸際にたって、勿体振って格好つけているのは『甘い』と言い切られたことすらある。
だからだろうか。関わりあいのあるおおよそ全ての人間から多かれ少なかれそう思われていて、隼人本人も客観的にある程度自分がどう見られているか冷静に察しているにも関わらず、こと竜馬に対する時のみ、隼人は自分がそう思われていると自覚すると、抗えぬ感情の波に飲み込まれかけるのだ。
目の前でにこにこと上機嫌そうに酒精の楽しさを甘受している彼を置いて、脳味噌が覚めた分下半身の酔いまで覚めてしまいそうになり、隼人は自制のために瞳を閉じる。
「…はやと、ねみぃのか?……まぁ、俺もちょっとねむいけど」
「……ん」
竜馬の指先が頬に触れる。彼のように柔らかくはないそこをむにむにとつつかれ、隼人は口許に少し笑みを浮かべて、その身体を掻き抱く。目を開けて瞳を覗きこんだら、不味いことになりそうな気がした。
「……吐き気と戦いながらヤるのも、悪くねぇかもな」
「うぇえ、俺は勘弁だぜ、ただでさえ毎回目ェ回りそーになってんのによぉ」
ぽつりと呟くと、腕の中の竜馬が言葉のわりにどこか楽しそうな声音で返事をした。
「ま、明日どうなるかに任せるしかねぇか……おやすみ、隼人」 
「あぁ」
腕の中で、竜馬がごそごそと寝やすいように姿勢を変える。
それにあわせて少し腕を緩めてやりながら、隼人は彼にだけ聞こえる程の声で『おやすみ』と返事をした。

———-
次の日
「二人とも(or片方)見事に二日酔いになって午前中撃沈、回復してきた午後から励んでしまい結局次の日も二人ともお疲れ気味になりみんなに心配される」ルートと
「二人とも酒に負けるようなやわな内臓ではなかった。朝からシャワールームでも部屋でも励みまくってやたら上機嫌で一緒に食堂に夕飯たべに来る」ルートが想定されてるんですが、後者は原稿が終わったら改めて裏SSで書きたいね…

イラスト・マンガ 一覧

一般向けの
・イラスト


・まんが

腐向けの(隼竜・竜馬受メイン)
・まんが&イラスト系


・日記ログ

そのほか
なんちゃってゲーム紹介ページ
着せ替えリョウ君

SS一覧

SS一覧

SSS一覧

クロスオーバー系SS / OVA&サーガ越境ネタ(設定はこちら)