射光(チェンゲ。隼竜。一応続きモノ。CP成立が遅い。)

※ご注意!
竜馬が刑務所でみた地獄に性的な意味での物が含まれています。苦手な方ご注意ください。
あと射光の方割と病んでるんでその辺もご注意を。

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射光

そして空は、青を取り戻した。
しかし、それは決して戦いの終わりをつげるものではなかった。
太陽の横を走る眩しい光線。やっと世界を照らした暖かな光にまるで対抗でもするように輝くそれは、やけにギラギラと照りつける癖に、地上にどうしようもなく不吉な影を伸びさせた。

「彼は――號は本当に死んだのか?」
「さあな、でもあんなんで本気でくたばるとは俺ぁ思っちゃいねぇぜ――それよりよ、なんだってんだよ、あれは!」
「ふ、お前が言うとそんな気もする……光線については、今ブリッジが調査に当たっている…ターゲット確保から解析までの所要時間は…軌道…目的まで調査してもそう時間はかからんだろう。しかし――折角空が戻ったというのに…どうにも…」
生体反応を止めた號に取り乱す渓や剴をなだめるのは彼らに近しい弁慶に任せ、隼人と竜馬は一足先にタワー…現在では最低限の施設しか残されていないが…に帰還した。勿論非常時で見周りもいない格納庫にゲットマシンを何とか押し込め、竜馬と隼人は司令室に向かうため非常階段を上っていた。
「あぁ…どうにも嫌な感じがしやがる…っていうかよ!使えねぇのか?エレベーター!」
息こそ切らせていないが、どうにもまどろっこしい移動手段に竜馬は流石に苛立つ。司令室のある場所までは、結構な距離があった。
「エネルギーもわずかだ、余計なものに使っている場合では無くてな…竜馬…」
「あ?何だ?隼人」
自分の数歩先を行く隼人の表情は解らない。だが、その声音がタワー司令の彼とも、ゲッターチームのチームメイトとしての彼とも違うものになったことに、竜馬はすぐに気づいた。
「…あまり、時間は無いが…二人きりだ…少し、話をしてもいいか?」
隼人が、後ろを振り返る。
見下ろすその目の表情に思い当たる節があり、竜馬は一度歩を止めたあと、思いきり踏み出した。
彼の横に並び…そのまま追い抜き、数歩先の踊り場まで走る。天井伝いに作られた窓から差し込む光の、そのラインに、竜馬の影が映り込む。
竜馬が己の影を追う様に振り返ると、暗がりのなかでも何か覚悟を決めたような隼人の面持ちが見てとれた。
逆に、隼人から竜馬の表情は――逆光に紛れて、よく見えない。
「りょうま…」
「お前が、めんどくせぇやりかたで、結局は俺をあそこに閉じ込める事になっちまった話か?」
まだ告げていないはずの――そして、隼人以外知る由も無い筈の真実が彼の唇からこぼれ、隼人は目を見開く。
「それとも、インベーダーのやつらに、あの事件の真相について、入れ知恵された時の話か?」
「!?」
少しずつ、光に目が馴れ、竜馬の表情が見える。
大きく、どんな時にもその意思の強さは捨てなかった瞳が、伏しがちな半眼になっている。
長い睫毛が影を作り、瞳に浮かぶ色は――隼人には、図ることができない。
「あぁ、それとも、あの実験を成功させるために、俺を―――」
「竜馬!」
耐えられない。
例え真実とて、彼の口から語られるのは堪らなかった。
それは、それだけはせめて、自分が負うべきことの筈だ。 焦る心のまま、彼の元まで走る。革靴が非常階段の硬質な床を蹴る音が響いた。
隼人の足が自分と同じ高さにたどり着くのを見計らい、竜馬はまるで彼の場所を作るかのように数歩後ずさる。
長いマフラーが、ふわりと風をはらみ、揺れた。
本当に、本当に久し振りに、触れ合える距離に二人立つ。
「悪かったな、隼人」
「?」
俯いていた顔をあげ、竜馬が隼人を見る。同じ高さに立てば自然に少しだけ、竜馬が隼人を見上げる形になる。
隼人が好きだった、しかしけして昔と同じではない彼の瞳が自分を見て、その不思議な表情に隼人は――あるいは、昔よりもずっと――吸い込まれるように彼の目を見つめ返すしか出来なかった。
「悪かった?…お前が…なにを…」
「お前がぐちゃぐちゃになってんのに気付けなかったことと…お前のここん中、全部知っちまっていること…両方」
言って、トン、と軽く左胸を叩かれた。
久方ぶりに触れる竜馬の手に、高鳴りかけた心臓はしかし、その言葉の意味を理解して止まりそうな程にぎゅうっと絞られた。
「この宇宙…すべての命の…あらゆる記憶…なんてよ、めんどくせぇから殆ど忘れちまったけど」
言いながら竜馬は片方の口角をあげて笑う。
「お前ぐらいねじくれてっと、流石に忘れらんねぇ」
一瞬の閃きの中に見た、一番運命に翻弄されていて、一番それに抗っていて――一番、自分のことで一杯だった記憶。
流石に見てしまった方も忍びないのか、竜馬は言った後で横を向く。細やかな陰影をもつ耳の、その外側が少し赤い。
「……りょうま…」
からからの喉が、彼を呼ぶ。
それが精一杯だった。
隼人は混乱していた。知られている?彼に?全て?どこまで――まさか。
この胸の奥に秘めた、いびつな恋情まで?
すうっと、腕から力が抜ける気がした。だとしたら自分はもう、彼に太刀打ちする術が一つもなくなってしまう。
それは何度も何度も捨てようとして叶わず、腹の奥にずるずるとわだかまっていた、できる限り直視したくない欲望だった。
月面戦争の頃からだ…。いつ失うとも知れぬ、ましてや同性同士でまず受け入れられないだろう相手に触れたくなる度、どうにかしてその欲望の矛先を逸らした。 一人善がりの哀しみと、一向にこちらを見ようとしない彼への検討違いの悲壮と、つまらない――今思えば本当につまらない自尊心。それらを駆使して、感情の甘い部分を心の海底に沈めた。
仕舞いにはとどめの様に自ら彼を裏切り、長く揺れていた想いは終わりを告げていた。…筈だった。彼があの地獄から帰還し、再び自分の前に現れる日までは。
「お前も大概、わけわかんねぇ趣味してんよなぁ…キレーなねぇちゃんも俺も、おんなじかよ」
「!…違う!」
呆れたように笑う竜馬に、隼人は思わず声を荒げた。それは本当に彼の思い違いだった。確かに、抱く欲望の形は女性に対するそれと同じだったが、それでも彼を一人の友として…時に憧れる男として大切に思っていた事は変わらなかった。
「どんなに俺の中身が汚かろうが、それは違う。俺は、お前を…」
ただ特別だと伝えたかったが、言葉が繋がらなかった。
今更、どんな顔をしてそんなことを言えというのか。
「だったら余計、変わってんなお前」
しかし、そんな隼人の葛藤を知ってか知らずか…いや、おそらく本当走は知っている癖に、竜馬は気にも止めない様子だ。
平素と全く変わらぬ彼の様子に、隼人も流石に毒気が抜かれる。
「…お前の前では、全てが無に帰すな」
「気付くのがおせぇよ」
だらりと腕から力を抜き、やっと隼人は笑みを作った。
ため息と共に浮かんだそれはしかし、随分と清々しいものに見えた。
「墓まで、持っていくつもりだったんだがな…」
「建つのかよ、こんな時勢に」
「言葉のあやだ」
言って、二人ともくく、と肩を震わせて笑う。
「竜馬、すまない――。好きだ。」
口に出してしまえば至極簡単な言葉だ。
好きだ。見ない振りをしながらも、結局どういうわけか――今も、目の前にいるのは、彼だった。
一つだけ、受け入れられないだろうことが怖かった。しかしもうそれもどうでもいい。回り道も、つまらぬ駆け引きも全て彼には通じないことを、何年もかけて教えられた。
知られるしかない感情ならせめて、自分の唇で告げたかった。
「知ってるよ。…っとに…めんどくせぇやつ…」
笑ったまま、竜馬はごそごそとコートから何が取り出す。それは、隼人が彼に渡したのとは違うものだったが拳銃だった。
あぁ、成る程。と感じ、隼人の笑みはさらに深くなる。彼にかなわないことがわかり、彼に思いを伝えることができ、そして、彼にほふられる夢が叶う。
この上無く極上の褒美に思えた。
ただ、出来ればすべて終わった後にしてほしかった。きっちりとこの世界に青空が戻れば、その確信さえ持てれば、自分のごとき男はもう用済みか――居なくとも、さしたる問題は無い筈だ。
それだけ告げようと口を開けようとしたところで、またも彼に先んじられた。
「まぁた、どうしようもねぇこと考えてやがるな」
竜馬は拳銃の安全装置をはずすそぶりを見せない。
手の中で弄びながら、隼人を見て楽しそうに笑う。
「あんまし時間もねぇ、まだなんも終わっちゃいねぇんだ…10数えるうちに選べよ。全部終わってから俺に殺されるか…それとも今、ここで俺を、抱き締めて、キスするか」
「!」
一体この短時間で何回自分の心臓は止まりそうになるのか。
信じられない、どんなシミュレーションにも無かった言葉が竜馬のくちびるから与えられている。
「よーく考えて…お前にとって本当に…罰だと思える方を選べよ。さて、いーち」
逃げ道は与えられていない。
逃げる権利など無い。
罰だと?罰ならば答えは決まっている。だが、それは…彼になんのメリットがあるというのだ。
「ろーく…ったく、早くしねぇと、こっちを撃っちまうかもしれねぇぜ」
言って、竜馬はふざけたように、でも随分と真剣な眼をして拳銃を自分のこめかみに当てる。
「駄目だ!」
例え安全装置が外されていないとはいえ、彼のそんな姿は見るに耐えず、思わず隼人は竜馬の拳銃を持った腕を掴み挙げ、片腕で思いきり彼の体を抱き締めていた。
「嫌だ…駄目だ!竜馬…」
抱き締めた腕が、自分でも滑稽なくらい震えている。恐ろしかった。もう二度と彼に消えてほしくなかった。一度は、自分から手放した癖に。
「竜馬…」
きっと、今自分はどうしようもなく情けない、惨めな顔をしている。
「なんだよ?まだ終わってねぇぜ」
愉快でたまらない、というように彼の唇が動く。
「さっさとしろ。弁慶達もきちまうかもしれねぇぜ。先行ってる筈のやつらがこんなとこで抱き合ってたら、あとから来るやつらに示しがつかねぇだろ」
酷く一方的な言い分だった。
しかし、彼に逆らう術など、もう一つもないのだ。すべての武器は――心の裏側にに至るまで全部、彼の手の内にある。
「竜馬…」
自棄のように、彼を抱く腕に力を込める。踏み出し、拳銃を持ったままの彼の腕を踊り場の壁に押さえつけ、唇を重ねた。
初めて重ねあったその部分はお互いに乾いていて、いたわるというよりも、まるでこれまでの心の飢えを確かめるかのように触れた。
本当にこれは、罰なのだろうか?
じんわりと、心の奥底が色付くような気持ちを、隼人は覚えた。
「おら、いつまでやってやがる!」
「うわっ!」
しかし、その仄かな明かりは、竜馬に思いきり突き飛ばされて消えた。
「ま、おめぇにしちゃあ上出来だな。これにこりたらもう、くだんねぇことばっかグダグダ考えんじゃねぇぞ!」
「あ、あぁ…」
言って、竜馬は満足したように拳銃をしまう。 「おら、呆けてんじゃねえよ、無駄話してる暇なんてもうねぇだろ」
急ごうぜ、とまるで今までのことが嘘のように先を急ごうとする竜馬の腕を、今度は隼人の方から握った。
「竜馬」
「あん?んだよ?」
いかぶしむ様に小首を傾げる竜馬を見て、小さく息を吐き、隼人は唇を動かした。
「もし次に…いや、次から真ゲッターが出る必要があれば、俺はここを空けてでもお前たちと共に乗る」
そのまま腕を引くと、驚くほど簡単に、竜馬は隼人の腕に収まった。
「初めから最後まで自分勝手な男ですまない。だが、もうお前と…離れるのはごめんだ」
共にいたい。
そう囁くと、驚いたように竜馬の肩が震えた。
ぎゅっと、竜馬の左手が隼人のシャツの胸の部分を掴む。まるで心臓にまで、隼人の決意の真意を確かめるかのように。
「………その言葉、お前、忘れんなよ…」
「りょう…ま?」
くぐもった竜馬の声が、首元から聞こえる。少し震えている様にも聞こえるその声は、彼にしては随分小さく、それでもしっかりと、隼人の耳に届いた。
「お前が…俺にそう言ってくれれば……例えどんなに離れてたって、俺達は…」
ずっといっしょにいられる。
そう続いた気がしたが、吐息だけになってしまいしっかりとは聞き取れなかった。竜馬の顔は見えなかったが、どういうわけか目の前の彼がやけに寂しそうに見えて仕方がなかった。
まるで、彼の方も強く自分と共にあることを望んでくれているような態度だ。ひょっとして、さっきの口づけといい…もしかしたら自分は、少しは自惚れても良いのだろうか?
「りょう…」
そう思い、その背に腕を回そうとした瞬間、ぱっと竜馬の体が離れた。
「ま…?」
「おら、急ぐぞ!司令が部下を待たせてどーすんだよ!」
そう言って竜馬に思いきり背中を張られる。
ばしっ!という力強い音と共に、隼人の足は二三歩前に出る。
「っつ…お前な…」
少しは年上を労れ、と隼人は思わず苦言を呈したくなる。
「締りのねぇ面してんじゃねぇぞ!司令がピシッとしてねぇで統率がとれるか!」
しかし、続く言葉で我に帰り、隼人は口元を引き締める。そうだ、今はまだ――自分にはゲッターに乗る以外にも、役目がある。
「よし…行くぞ!竜馬!」
「おう!アレがなんだろうが、俺たちの手でぶっ潰してやる!」
そう言って笑う竜馬は、好戦的で何があっても不敵な、本来の彼そのものの表情をしていた。
まだだ。まだ何も終わっていない。今は決して、安堵の時ではない。
それでも。
長い、永い時を経てやっと手が届くところに与えられたような気がするその笑顔と、踊り場の高い窓から覗く青空に決意を新たにし、隼人は踏み出す足に力を込めた。

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もうちょっとなんか…なんかもうちょっと考えようよ司令へたれ過ぎるよ…なんか、非常階段ずっと昇るだけってのもFF7みたいだしさぁ。
と思って寝かせてましたが、なんか寝かせ過ぎてもう逆にどーにでもなーれ!状態になってしまったので見切りUPしてしまいました。そんなんばかりや。
一応全ての命の記憶を見た(自己申告)割にはあんまそんな感じしないよねチェンゲ竜馬。他の竜馬に比べて脳の記憶容量はある気がするんだが…。そして残念ながらなんかどっちも多少病んでる!

2014/05/10 up

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